手作り納豆で日本の食文化を米国に

三兄弟納豆社長 荒井 千恵子さん

  ブルックリンで新鮮なオーガニック小粒納豆をオンラインで販売している。オーナーの荒井千恵子さんが10年前にカンザス州で作り始めた。ラマポカレッジ時代にバイオロジーの学位を取った。もともとは環境科学が専攻。仕事が比較的見つかりやすいと一般的なバイオロジーに専攻を変え、大学卒業後は化粧品会社AVONの微生物研究所(R&D リサーチアンドディベロップメント)で商品管理のテストをする仕事をプラクティカルトレーニング中にしていたという。その時、微生物に関わった経験が将来的に発酵商品への興味や関心に繋がったのかもしれない。日本から納豆を運ぶために必要になる資源やスタイロフォームのゴミの削減への思いと我が子に新鮮な納豆を食べさせてあげたいという気持ちが合体し、現在の三兄弟納豆として実現した。

 米国では新鮮な納豆を手に入れることが難しく、ほとんど全ての納豆が冷凍されていることから、できたての納豆を自分の子どもたちに食べさせたいという一心で手作りするようになったのがきっかけだった。自宅で作って友人・知人に配ったところ評判が良く、ビジネスにした。納豆に使用される豆はオーナーの荒井さん自身がカンザス州の農家に足を運び信頼できる農家から仕入れ、買い付ける。一つ一つ悪い豆を取り除き、良い豆だけを残して何度も水洗いして発酵、1週間弱かけて作られる。

 納豆を作る上で一番大事なのはまず根気強さ、そしてスピードと温度管理だという。発酵自体は時間と根気が必要な作業だが、納豆菌を付着する際は特に他の菌が混じらないように手早く作業しなくてはならない。温度管理も納豆菌が元気に繁殖する環境づくりにとても大事だ。悪い豆をひと豆ひと豆省いたり発酵中は夜中でも4時間おきに温度管理したりという根気さも品質の良い納豆造りに繋がっている。

 ブランドのネーミング「Sankyodai Natto(三兄弟納豆)」は3人の子供たちが健やかにという思いも込めてつけた。長男が大学に進学したのを機にカンザスからブルックリンに転居し、今では専攻のコンピューターサイエンスを生かして、ウェブデザイン、オンラインストアやデジタルマーケティングから配達までビジネスを全般的にサポートしてくれるという。

 荒井さんは「将来は特有のにおいや粘りが苦手な方にも食べやすいよう納豆を使った新商品も開発したい」と話している。また、日本の食文化などを通して、日本に興味や関心がある現地の子供たちが在米の日本人の子供達と日本文化とアメリカ文化を一緒を学び、そして助け合うプログラムや無料のセミナーを会員制で参加できるノンプロフィット団体、Japan Cultural Exchange of New Yorkも今年の10月に創立、納豆を通じたビジネスと社会参加活動に積極的に関わっていきたいと話す。

 (三浦良一記者、写真は本人提供)