映像の世界で全力投球

映像作家

山崎エマさん

 自称「イチローの世界一のファン」という映像作家の山崎エマさん。小学6年生の時にイチローの著書の中で「早く好きなことを見つけて、それを努力しよう」という言葉に感化された。中学校の授業でビデオ撮影と編集のクラスを受けて「映像だ!」と決意した。高校では学園祭の記録映像を制作、映画を学ぶなら最先端の国へとニューヨーク大学に進学、漠然とストーリーテラーになりたいと思っていたことと、ドキュメンタリー制作が合致した。「自分で決めたから、これまで迷うことはなかった」。
 プロとしての第1作は、「おさるのジョージ:著者の大冒険」。有名な絵本の著者の数奇な人生について3年がかりで仕上げた。クラウドファンディングで約2千万円もの支援を受け、映像制作の厳しさを痛感した。そして2作目が11月上旬にニューヨーク市の記録映画祭「NYCDOC」で世界初上映された「甲子園:日本のフィールド・オブ・ドリームズ」。300本もの作品が世界中から集まるなか、唯一日本関連長編として参加した。
 山崎さんは、父はイギリス人で母は日本人。大阪で小学生時代を過ごし中学・高校は神戸のインターナショナルスクールへ。「ニューヨークに来て、日本のいい点が見えてきた。小さい町で公立小学校に通った時のことが今の自分にすごく影響していると感じた」という山崎さんは、「スシ、ニンジャだけじゃない日本を紹介したい」との思いで帰省した2年前の夏、高校野球が目に飛び込んできた。家でも食堂でもみんながみている国民的イベント。折しも次は100回大会と聞き即行動した。4000校もある中での高校選びは米国上映を視野に入れ、「アメリカで著名な大谷翔平選手の関連する学校、アメリカから野球が伝わった地である横浜…」などとキーワードを繋げていき、主に神奈川県の横浜隼人高校の水谷哲也監督と選手らを1年間密着取材して、礼儀や作法なども含めた「野球道」を通じて日本人の美徳を紹介した。「靴をきちんと揃えるシーンなどはあえてしっかり撮りました」。丸刈り廃止などの高校野球界の変化も最後に添えた。
 今は、ニューヨークと東京を拠点にテレビ映像の仕事などを手がけつつ、本作を米国各地で上映できるよう活動を続け、次作は日本の小学校をテーマにした作品を企画中。自ら定めた道を邁進する山崎さん。「やりたいことで稼げるということが近づいてきた」との言葉に力がこもる。(小味かおる、写真も)