NYでヴァイオリン指導する演奏家

ヴァイオリニスト
ウエストチェスター音楽スタジオ代表

多治比 純子さん

 ニューヨークで広く音楽教室を運営している神保音楽スタジオで15年間、バイオリンとビオラの講師として勤務してきたが、このほどウエストチェスターのハリソン校を引継ぎ、名称も新たに「ウエストチェスター・ミュージック・スタジオ」として再スタートする。「40年以上、NYの日本人コミュニティーの音楽教育を支えてこられた神保先生のように、ローカルに愛される教室作りを目指し、先生の愛用のピアノと共に同じ場所(小澤歯科2階)で指導します」と気持ちを新たに抱負を語る。

 山口県柳井市出身。愛知県立芸術大学音楽学部器楽学科 弦楽器専攻卒業。89年山口県TYS学生音楽コンクール第1位・山口県音楽協会長賞受賞。96年、ドイツにて、バイロイト国際青年芸術祭に参加、特別演奏会に出演。97年、山口県新人演奏会に出 演。98年99年と続けて米国アスペン音楽祭に参加・修了。 岸辺百百雄、岡山芳子、田中直子、ロナルド・コープスの各氏に師事した。

  「ウエストチェスター地区は、アフタースクールでの音楽教育がとても盛んですが、学校での大きなグループ指導では、なかなか隅々まで目が届かず、プライベートレッスンを求めてくる生徒さんも少なくありません。今まで指導した生徒さん達を「オール・ステート・オーケストラ」やリンカーンセンターに送り出しましたが、選抜されて檜舞台に立つ生徒を見た時は、指導者冥利につきます」と目を細める。「それぞれのレベルに合った指導はもちろん、生徒同士でのアンサンブルや地域の奉仕活動など演奏機会をより提供し、音楽を通してさまざまな経験を積んでもらえれば、と思います」と話す。

 今回の新たなスタートに際し、ウエストチェスター音楽スタジオの教室を運営する会社「ARTXUEST NEW YORK INC.」を設立した。社名は、ART + QUEST を組合わせて創作。「多くの人々が集まる交差点、そして西洋と東洋の文化が交わる場所となるという意味を込めて『X』を間にアレンジしています。音楽教室としての利用のみならず、さまざまな芸術を体験できるスタジオに発展させていきたい」と意欲をみせる。  

 多治比さんにとって、人生最大のイベントは、2006年のカーネギーホール大ホールでのオーケストラとのコンチェルト共演だった。その際は、ある財団からストラディヴァリを半年貸与され、多くの支援を全方向から浴びたような経験だったという。2013年にもソロリサイタル、その後も室内アンサンブルなど通算5回もカーネギーホールで演奏をする名演奏家だが腰は低い。

 「自分は、日本を代表するような超一流の有名バイオリニストではないですが、だからこそ、弾けない子供の気持ちがよく分かる。音感を大切にするあまりに楽譜の読み方がきちんと分からない音大生もいる。当たり前に楽譜も読めるように指導しながら、今後はオンラインなど音楽活動が多様化している中でも、ライブでしか伝わらない、体験出来ない喜び、楽しみを子供たちに伝えたい」と音楽教師の表情を見せた。(三浦良一記者、写真も)