日米と官民を結ぶ架け橋に

NYマーケティングビジネス・アクション・インク代表

    古市 裕子さん

 古市裕子さんは、ニューヨークのジェトロに17年間勤務した経験を生かして5年前、海外市場調査と日本企業の対米進出、人材育成支援をするニューヨーク・マーケティング・ビジネス・アクション・インクを立ち上げた。先ごろもフランス、日本、ニューヨークの3極を結ぶ民間団体のウエブセミナーに参加し、「アフターコロナの世界の潮流と日本の行方、そして自分の生き方」というテーマでニューヨークから意見を述べた。

 今年に入って、新型コロナウイルスの感染拡大と収束へ向けた世界的な取り組みの中で、ビジネスモデルが大きく変わろうとしている。在宅勤務やZOOMなどを使った遠隔モニター会議も、否応無しに日常業務の中に入り込んできている。古市さんがいま一番感じていることは、特にビジネスの世界で潮流を決めていくのは今後はミレニアム世代の次世代、Z世代(10代から24歳)であること、意思伝達のスピードが世界規模で劇的に高速化していることの2つだ。

 新型コロナとの闘いの最中で起こったミネアポリスの警察官によるジョージ・フロイドさん殺害事件は一般市民が撮影した動画が世界を動かした。従来は社会一般の目になかなか触れることのなかった「不都合な情景」がインスタグラムやSNSを通じて瞬時に広まる時代のビジネスは、コロナ以前のビジネスとは明らかに異なる。60年代の公民権運動になぞらえる今回の世界的な「BLACK LIVES MATTER」の抗議活動や急速に変化を遂げるLGBTの権利獲得活動もかつてのようにリーダーが先導していたのではなく「リーダー不在の時代」の流れを「賛同ではなく共感で動くZ世代が作り出している」のだと。相談を受ける日本企業にも常に「アメリカで売りたい物を持ってくるのではなく、Z世代が興味を持つか、市場が必要としているか」を問う。

 古市さんは、三重県津市で生まれた。母親は書道の先生、父親は教師。県下の四年制大学を卒業後、名古屋の国際センターに3年間勤務した。そこで国連児童基金(ユニセフ)や国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)を通じて日本国内から寄付を集めてラオスやカンボジアに学校を建てる活動に関わったことが世界に目を向けるきっかけとなった。1995年に国連職員になることを夢見て来米し、ニューヨーク市立大に留学、大学院に進み政治経済学国際関係論修士課程を修了。在学中に念願の国連職員採用試験(P2職)に見事合格したが、2001年の米同時多発テロでポストがなくなり採用が流れ挫折感を味わった。在学中に入ったジェトロに採用され2015年まで経済産業省貿易保険部NYで主に中南米各国カントリーリスクおよび企業信用リクス調査に従事した。

 日本と欧米、官と民とを結びつけるパイプ役だけでなく日本の「ハンコ世代」から世界のZ世代への架け橋としてアフターコロナ、ウイズコロナの時代を見据える。書道は師範の腕前。USジャパン・キャリア・ネットワークSDGs NY代表、米財務経営戦略アドバイザー・キャリアコンサルタント(厚生労働省国家資格)、国連フォーラムNY幹事所属。 https://ny-mba.com/

 (三浦良一記者、写真も)