女性の人生と向かい合う医師

コロンビア大学病院 一般産婦人科医

常盤 真琴さん

 ニューヨークでは数少ない日本人の産婦人科医だ。東京都出身。高校の時に交換留学で一年間フロリダに滞在したことがある。英語が全くできなかった上にスペイン語がメインの地域で、準備不足だったこともあり苦労したそうだが、米国のポジティブな雰囲気が好きで、もう一度いつかは戻ってきたいなと思っていたという。東京工業大学の生命理工学部在学中に生命の誕生に興味を持ったことがきっかけで、医師になるために山形大学医学部に入り直して卒業。臨床研修が始まった時に、一度気持ちを白紙に戻して本当にどの診療科に進みたいか決めようと思ったが、産婦人科が格段に興味深く「これしかない」と決めた。

 山形大医学部を卒業後、2007年4月から10年5月まで東北公済病院で3年間研修、同年12月に来米、米国医師国家試験に合格。17年6月ニューヨーク大学病院産婦人科研修を修了、同年7月からコロンビア大学産婦人科で一般産婦人科医として勤務している。

 米国で医師として働くことについて聞くと、「アメリカでというよりは、ニューヨークでは、人種も文化も多様な患者さんを診る機会に恵まれています。ニューヨークに来る前まではアメリカでもう一度お産を勉強し直す理由ってなんだろうって思っていたが、ここで医師としての経験を積んだことで一つひとつのことに対して奥深い理解ができるようになった上、対応できることも広くなったと思う。例えば、妊婦さんの例をあげても、年齢は12歳から60歳まで、痩せてる人もいれば体重200キロの人もいるし、アメリカで生まれ育っている人もいれば、最近アフリカから来米した人、初めてのお産から12人目のお産だったり、人種や宗教や文化背景、婚姻関係も多種多様。妊娠、出産、女性の人生は、こういった背景によって、疾患のリスクファクターが変わったり、それを基にどういう検査が必要になるか、どんな質問をしたらいいかなどを考える素になりますし、どんな風に説明したらわかってもらえるかを工夫するようにしています」と話す。

 中高年になってからの体調の変化や不安など、なかなか人に相談しづらいことも親身に相談アドバイスするようにしているという。5月1日にニューヨーク日系人会のサクラ・ヘルス・フェアでBCネットワーク主催のセミナーの講師としても参加する。女性の更年期や閉経後の体調管理などについて講演する予定だ。「女性の人生はトライアスロンみたいなもの」と笑顔を見せた。(三浦良一記者、写真は本人提供)