アートを通して障害者に希望を与える

アーティスト・アートセラピスト

久徳 裕子さん

 ニューヨーク市でアーティスト、アートセラピストとして活動している久徳裕子さん(31)は、11年前、アートを勉強するために来米した。四年生大学卒業後にアートを使って人に役に立てる仕事はないかと模索していたところアートセラピーのキャリアを見つけ、その道に進むことを決めたという。昨年ニューヨーク大学大学院を修了し、アートセラピストとしてはNYUランゴーン・ヘスルセンター、ボストン・チャイナタウン・ネイバーフッドセンター、マンハッタンの老人ホームなどでセラピーを提供。特に障がいのある子ども、認知症のあるお年寄り、精神疾患のある大人に対してのアートセラピーを提供してきたが、現在はハーレムにある子供の病院でセラピストとして勤務している。

 それと同時にロングアイランドシティーにあるローカルプロジェクト・アートスペースでは昨年アーティストとしても自身の作品を展示発表する2つの個展を開催するなど、クリエイターとしての才能を発揮しながら、その分野を通して社会とのつながりをダイレクトに持てるアートセラピストとしての仕事を両立させている。

 アートセラピーに興味を持ったきっかけは、医者の家系に生まれたので、元々医療の世界に興味があったことと、これまで色々とボランティア活動をいろんな場所と国でしてきたことも影響している。インドのマザーテレサの孤児院と死を待つ人の家、カンボジアの孤児院、バングラデシュの小学校、日本とニューヨークのホームレスシェルターでボランティアをやっていたことがあり、自分の好きな道と社会に役立ちたいという気持ちの両方を満たせる現在の仕事についた。1500時間の実務経験を積みながら、州と全米の国家試験を受けるための準備を進めている。

 セラピーでは、粘土や画材を使って手を動かして作品を作ること患者のニーズに応えるのが目的で作品を作り上げることが必ずしもゴールではない。トリートメントのプロセスを表現するものであっても作品が出来上がるわけではないが、作品を作りたいというモチベーションに共通点を見出すという。

 個展に出品した作品にはブルーを基調とした絵画などが多い。「青色は希望の色なので好きです。可能性を感じる色」という。同じ病でも、治療に希望が持てる患者と希望がないケースとでは、病気の悪化の進み具合や回復の度合いが大きく異なることを実感している。「患者と接することで自分の人生で学ぶことも多く、個人的にそれが芸術表現としての作品にも出ていくことにつながる」と話す。将来は、アートセラピークリニックを個人開業するのが夢で、主に移民と有色人種向けのセラピストとして活動したいという。岐阜県出身の愛知県育ち。(三浦良一記者、写真も)