女性和太鼓集団鼓舞 20周年「万葉の森」

写真・Mutsu Watanabe

 今年で結成20周年を迎えるニューヨークの女性和太鼓集団「鼓舞組」の公演「万葉の森」古き和歌の鼓動が12月27日、市内イーストビレッジのジョンソン劇場シアター・フォー・ザ・ニューシティーで開催された。今回のショーは、日本最古の和歌集である万葉集から20首の和歌を選び、その和歌の鼓動をパフォーマンスで表現した。日本語の持つ美しさ、和歌の中から伝わる古き日本の情景や人々の心情や鼓動を感じさせた。演奏した和歌の一部と内容を紹介する。

 初春の令月にして気淑く風和ぎ 梅は鏡前の粉を疲き蘭は珮後の香を薫らす

 これは令和という元号の由来にもなったという万葉集の和歌。この和歌をプロローグとしてショーが始まった。照明、ナレーション、ライブビデオパフォーマー、それぞれの演出家が鼓舞の曲目が始まる前の空気感を作り出していく。令和という新時代の扉を開いた今こそ、古き時代の人々の世界観を覗くという試みでもある。時は7世紀後半から8世紀前半の飛鳥時代。人々は何を想い、何に命を燃やしたのか。今日に至るまでたくさんの長い年月が流れ、世界は大きく変わったが「きっと変わらないものもあるはず。忘れてしまっていることもあるかもしない。そこで感じるものを見つけて」と観衆を誘う。

  熟田津(にきたつ)に 船乗りせむと 月待てば 潮もかなひぬ 今は漕ぎ出でな

 この歌の通り、未知の世界へと漕ぎ出でようとする大勢の人々を鼓舞する躍動感、鼓動の高鳴りを表現した。衣装のバックプリント《鼓舞組》の文字は手縫いで描かれたもの。

新しき年の初めの初春の 今日降る雪のいやしけ吉事

 新たな年の初めに降り積もる雪のように、喜ばしい事や祝うべき事がますます積り重なっていけという希望溢れる和歌。これはタイトル通り、良いことがたくさんありますように、という気持ちを全力で表現。衣装のミニ浴衣は一人一人帯の柄や色が異なる。

  リーダの宮本やこさんは「新しい時代になり、令和の元になった万葉集を紐解くことで古(いにしえ)の人々の思いが良く理解できた。私たちも結成20周年の年になるので、新たな気持ちで進んでいきたい」と演奏後に語っていた。