人生刻む皺やフォルム写す

写真家 高島 未季さん

 神奈川県横浜市出身。桑沢デザイン研究所在学中はスペースデザイン専攻。在学中にしたヨーロッパ旅行で、建築やランドスケープ、現地の人の生活などを一眼レフで記録し、思いのほか自分の意図通りに撮影ができていたのをきっかけに、写真に熱中していった。幼い頃からイラストを描くのが好きで、得意だと自負していたが、色を塗るのが苦手だった。カメラは、シャッターを押せば完璧な色つきの絵を作ることができる。自分に最適の表現媒体だと思った。
印刷会社で写真レタッチの仕事の後、日本でコマーシャルフォトグラファーのアシスタントを経て3年間フリーランスフォトグラファーとして活動、商業写真からファインアートフォトグラフィーに重心を移すため2016年に来米、以来ニューヨーク暮らし。
 現在4つのパーソナルプロジェクトを進行中だ。どの作品からも精緻な作品の画像の一枚一枚に焼きつけられている人の人生や佇まいの空気感が伝わってくる。
手掛けているテーマ(1)は「Time on the Skin 」。経験を重ね、知識が増え、知恵がついたら、世界を違った目でみられるはずだと年を重ねることへの憧れがあった。実年齢より若く見せようと振舞ったり、レタッチされて不自然な肌の広告などを目にするたびに疑問を抱いてきた。誰一人として同じラインを持つ人はなく、顔に描かれた皺は本人のパーソナリティーや経てきた時間を表すポートレートだと考えこの作品を作っている。人が経て来た時間を褒め称えると同時に尊敬の念も表現できたらと思い制作している。作品を見る人に、別のアングルからの価値観を示唆したいとの意図がある。
 2つ目は「Body」。女性の一般的な見られ方、男性の一般的な見られ方に疑問を抱いたところから始めたプロジェクトで男性の肉体のフォルム、陰影などが描き出すシルエットのような曲線美の部分を切り取った作品=写真=。
 3つ目が「Land Scape」。ニューヨークでの滞在を始める前は、大都会という側面しか知らなかったが、ニューヨークのすぐ外側に美しい自然と生活が存在することを知り、ニューヨークのもつ別の顔に単純に強く惹かれ撮影を続けている。
 4つ目が「Interior」。本人の生活、行動、性格、信念のみでなく、文化や社会をも反映するものと考え、家は人の間接的なポートレートであると考えるようになった。日本の建築雑誌『住宅建築』でアメリカのインテリアを紹介する連載も担当している。自己表現手段として写真の世界と向き合い来米して3年、ニューヨークで作品発表の場を見つけていくのが目下最大の目標だ。
(三浦良一記者、写真も)
作品はウェブサイトwww.mikitakashima.comで見ることができる。