ラム・ウールセーター

イケメン男子服飾Q&A 85
ケン 青木

 レイバーデイを過ぎますと、途端に秋が近づいて来たなあ、と。日ごとに日の入りも早くなっておりますし。そんな時期に「もうそろそろかなあ」とふと思い出すのがラム・ウールのセーターなのです。丸首:ラウンド・ネック、クルー・ネックも悪くないのですが、お仕事にも、ということでしたらやはりVネックの方がオススメです。

 ラム・ウール、昨今、昔ながらのやや毛羽立ったモノではなく、比較的薄手であまり毛羽立っていないものが多くなっている様ですが、今回は、昔ながらのラム・ウールセーターについてです。

 Lambs Woolと書きますが、仔羊のことですね。羊はSheepで単数・複数共にSheepなのですが、仔羊はLambで複数はLambsと書きます。日本ではラム・ウールセーターと表記されます。Lamb仔羊の定義は素材の世界においてはやや曖昧で、生後6か月、つまり半年から10か月くらいまでの羊毛のことを意味していたのですが、近年においては生後7か月の羊の羊毛ということに意味合いが統一されつつあるようです。ウールと言えば羊毛だけを意味します。カシミアやキャメルはヘアーと言います。ウールだけが縮れた繊維でして、そしてCrimpと呼ばれます、私たちの毛髪にもある鱗状のものが水分を吸収したり、また発散したりするのです。例えば同じ繊維の重さであれば、ウールの方が綿よりも1・5倍以上水分を吸収しますし、逆にウールの繊維とは正に天然のエア・コンディションのシステムなのですね。

 今から40数年前、プレッピーというファッションが流行いたしました。御存知の方も多いかと思いますが、プレッピーとはアイビーリーグ・スクールへの進学を目指す私立高校の生徒さんたちのファッションで、語弊がないわけではないのですが、アイビーの高校生版。特徴は(1)アイビーに比べて服の組み合わせ、コーディネートが斬新と言いますか、ユニーク。例えば半袖のポロシャツにオックスフォード地のボタンダウンシャツを重ね着して、寒くなったらダウンヴェストを重ね着するなど。(2)アイビーに比べて服の色味が鮮やかで、男女かかわらず、ピンクとグリーンを多用する傾向があること、(3)基本、身体に近いウエアについては天然繊維を、ダウンベストなどアウターウエアには最新の合成繊維を、と。

 で、ラム・ウールのVネックセーターは天然繊維とアウターウエアとの繋ぎ役という立場になりますから、(a)シャツの上に着る、羽織る、(b) 寒い時にはアウターウエアやジャケットなどのインナーとして大活躍となるのですね。

 先にも申し上げましたが、ラム・ウールとは生後7ヵ月の羊の毛ですから、繊維は細く、柔らかく、ウールのセーターの“チクチク”が苦手な方にも大概大丈夫なのですが、それでもチクチクする様でしたらごめんなさい。このラム・ウールの中でも世界的に評判が高いのが、オーストラリアのGeelong(これは決してジーロングとは発音せず、ジロンくらいの感じで発音してください)という町の特産のLambs Woolが素晴らしいです。

 ラム・ウールのVネックセーター、色はグレー、ネイビーブルー、キャメル、ブラック、ワインカラーといった「大人の男の基本色」で何も問題はないのですが、この冬、あえてイエローやレッド、グリーン、ブルーといった明るく活動的な色をオススメしたいです。

   それではまた。

 けん・あおき/日系アパレルメーカーの米国代表を経て、トム・ジェームス.カンパニーでカスタムテーラーのかたわら、紳士服に関するコラムを執筆。1959年生まれ。