金魚ちょうちん

 夏になるとアトリエで存在感を見せてくれる金魚ちょうちん。

 絵のモデルとなる池の金魚と違って金魚ちょうちんは、ガラス窓越しに青空を背景にして風に揺れる姿は、涼を感じる。

 この金魚ちょうちんは、山口県柳井市を代表する郷土民芸品。幕末のころ、柳井の商人が子どものために青森県弘前市の「金魚ねぶた」にヒントを得て金魚を竹ヒゴでかたちをとり、和紙を張り柳井の伝統織物の染料を用いて作られたと言われている。

 赤と白の胴体に、大きく描いた黒い目は、愛嬌のあるおどけた顔の金魚ちょうちん。

 柳井の夏の風物詩として親しまれ、毎年8月13日に開催されている「柳井金魚ちょうちん祭り」では、石畳のある漆喰の白い壁と格子窓の家が両側に並び明かりをともした金魚ちょうちんが、いたる所に飾られている。 近年は、多くの観光客が訪れている。

(くぼ・しゅう/切り絵画家/東京都在住)