その15:コロナ禍がルート66に及ぼす影響

魅惑のアメリカ旧国道「ルート66」 をフォーカス

 ルート66ファンの皆さん、こんにちは!あっという間に2020年も前半最終月である6月になってしまいましたが、いかがお過ごしでしょうか。通常であればこの時期は梅雨の話題が中心になるところですが、今年ばかりはそうもいかないようです。とはいえ、東京の梅雨入りは6月中旬との予報ですが、先月末よりすでに熱帯夜に近くなる日も出始め、日中30度近くなる日も少なくありません。暑くなってくると思い出されるのが、春頃少し話題になった「コロナは暑さや湿気に弱い」という仮説?ですが、今日現在それが明確に証明されていることは未だ無く、予断の許さない日々が続くことに変わりはないみたいですね。ここ日本でも第2波、第3波到来の可能性が心配されていますが、そもそも第1波は終わっているのか?という疑問も含め、世界的に終息する気配を見せないコロナの影響は本当に重く私達に圧し掛かっています。皆さんも健康と安全にはどうかより一層ご注意ください。

 さて今月の「魅惑の旧街道を行くシリーズ」シーズン③ 第15話は、そんなコロナ禍がルート66に及ぼしている現状をお伝えします。

 毎年80〜90のイベントがルート66上の各州または州をまたいで行われます。代表的なものはこの紙面でも毎年始めにお伝えしていますが、ご想像通り今年はそれらのほとんどが中止または延期となっています。ルート66が活発に動き始めるのは例年3月〜4月で、北のイリノイ州、ミズーリ州等はまだまだ寒い時期ですが、西から人々は旅を始める傾向にあります。今年はコロナが世界を震撼させたのがちょうどその時期で、3月には東京オリンピックの延期も発表され、人々は「長期戦」になることを理解しました。それを受けてか、ルート66の各イベントオーガナイザーの対応はことのほか早く、著名なイベントである5月の「Arizona Fun Run」(アリゾナ州)、「Red Carpet Corridor Festival」(イリノイ州)、「Gay Parita Car Show」(ミズーリ州)を始め、6月に各地で行われる予定であったカーラリーやロデオの大会等も全て中止になってしまいました。唯一オクラホマ州タルサにて「宇宙カウボーイ」のマフラーマン像で有名なBuck Atoms のショップ(本記事19年12月号掲載)に新しく建てられたネオンの点灯式が、基本的に参加者を極力集めず、フェイスブックのライブ配信でイベントが行われました。

 5月中旬以降、アリゾナ州のジャック・ラビットやエンジェルさんのギフトショップ等で次々と営業再開のニュースが聞こえてきたのは嬉しい限りですが、同時にイベント中止の余波は止まらず、先日遂にルート66上最大のイベントの一つである「Birthplace of Route 66 Festival」(8月14日・15日開催予定)が中止になるという事態が発生しました。過去9回を数えるミズーリ州での同イベントは昨年2日間の参加者数が6万5000人を超え、一大イベントとしての立ち位置を作り上げ、今年は事前登録のペースから8万人近くまで伸びるのでは、と期待されていただけにその落胆は相当のようです。筆者も所属する1000人を超えるルート66のSNSコミュニティでも数日間コメントの嵐が止まらない状態でした。米国外に目を向けるとやはり8月にチェコのズリンで行われる予定であった「International Route66 Festival」も同様に中止となっています。こうなると気になってくるのが(ルート66とは直接関係はないですが)、ニューメキシコ州アルバカーキで毎年10月に開催される「Balloon Festa」や11月にオクラホマ州タルサで予定されている「Route 66 Marathon」あたりの開催もどうなるでしょうか。人々の健康や安全を度外視してまで行う必要のあるイベントはありませんが、通年で何もやれなかった、というのは残念以外何ものでもありません。

 このような状況のなか、イリノイ州観光局は今月、今後の見通しとして明るい材料を取り上げました。それはコロナ禍によって航空機での移動が以前ほど簡単でなくなった今、多くの観光客が車による移動での旅行需要が増えるのではないか、という点です。人々はわざわざ航空機に乗って遠くへ行くよりも「近場で」休暇を過ごす頻度が増えるであろうと。同州最大の都市であるシカゴを例にとれば、2時間、4時間、そして6時間以内に行ける場所に多くの人が住んでいる環境でもあり、至近距離の旅行ニーズに関する後押しであると、デ・ポール大学のホスピタリティ学科の教授もそのように話しているようです。最近米国旅行協会が発表した調査では、米国民の68%が車で旅行しているときが「最も安全」と感じているという数字が出ました。その中でも45%に上る人たちは今後はさらに車で旅行をする可能性が高いと言っています。また、全体の35%近くの人々が休暇の目的地として300マイル程度(約480キロ)は充分運転する余裕はあるとも調査が示しています。

 さらに6月の初旬にニューメキシコ州観光局が開催した「観光経済の再生」では、観光局は国民の80%以上が今後数か月以内に車を利用した休暇を計画しているという調査結果を発表しました。旅行計画者はとにかく「群衆を避け」「社会的距離を保ち」「マスク等のリスク軽減に役立つ保護材料を携帯して」対コロナウィルスへの感染を防ごうと努力しているようです。こうした皆の努力の成果として、ルート66はもちろんのこと、世界中が普通に旅行が再びできるようになる日が待ち遠しいです。それではまた来月お目にかかります!

(後藤敏之/ルート66協会ジャパン・代表、写真も)