NYにおける日系アート業界の動き

ポストコロナで再開

 コロナの混乱が始まって2年。規制が少し緩くなってニューヨークもフルで再開し始め、この春は例年通りの数々のアートフェアが開催されたので、日系のアート業界の動きをまとめてみることにした。

 筆者も台湾出身の林世宝(1962〜)のキュレーターとして参加し、ピア36で開催のアートエクスポ(4月7日から10日)では、1719年創業の宗像窯(福島県)から宗像利訓(1985〜)が、美しい青が特徴の瑠璃天目茶碗や翠彩花瓶などを展示して印象的だった。

 パークアべニュー・アーモリーで開催の主にマスタークラスを展示するエレガントなTEFAF(5月5日から10日)には、松山智一(1976〜)が円形のキャンバスに描かれた「Love Had Better Do」(2022年)がピカソなどマスターの作品と一緒にアルミヌレッシュ・ギャラリーに展示されていて、日本人アーティストのリーダー格として勢いを顕にしていた。ティナ・キムには新妻実(1930〜98)の彫刻も紹介されていた。

ナウヒアによるエキソニモのインスタレーション、Metaverse Petshop Beta(2022年)

 同じくピア36開催のナダ(NADA=New Art Dealers Alliance、5月5日から8日) には、ニューヨーク現地からナウヒア(NOWHERE) が、エキソニモ(exonemo)の「Metaverse Petshop Beta 」(22年)を展示。スクリーンに現れるポップな犬を電話でQRコードをスキャンし、10ドルで購入して自分のものにできるという作品で、200頭以上も販売、ニューヨークタイムズ紙も大きく取り上げるなど格別な人気を集めていた。東京からはカヨコユウキも参加しており、アレックス・カッツを思わせる大型作品を含めた西村有(1982〜)の絵画を中心に見せていて、ほぼ完売していた。オーナーの結城さんは「いつもマイアミのNADAに参加していたんですが、ニューヨークのビジネスが戻ったと聞いたので今回は参加しました」と誇らしげに語っていた。またミサコ・アンド・ローゼンも東京から参加、題府基之(1985〜)の「untitled (pee)」(21年)を紹介していた。

 ハドソンヤードにあるザ・シェッドで開催のフリーズ(5月18日から22日)では、メキシコのペドロ・レイエス(1972〜) が反核をテーマにZERO NUKESを展示し、イサム・ノグチの実現しなかった原爆慰霊碑のアーカイブ資料を見せていた。他には村上隆(1962〜の彫刻「Together with the Flower Parent and Child」(21〜22年)など2点をペロタンが、草間彌生(1929〜)の大型絵画「Stars in the Boudless Universe」(2010年)など2点をヴィクトリア・ミロが、サイモン・フジワラ(1982〜)のポップな作品をドイツから出展のエスター・シッパーが扱っていた。ヴォルタ(VOLTA )には靖山ギャラリーが池尻育志(1971〜) を、スペース776が岡安秀士(1990〜)を、東京のカナ・カワニシからは横山隆平(1979〜)が紹介されていた。AIPADのフォトグラフフィー・ショーには当地のミヤコ・ヨシナガが安楽寺えみ(1963〜)と普後均(1947〜)を展示、東京からPGIが、アントワープから日本人の写真で知られるIBASHOが参加した。(インディペンデント・キュレーター 佐藤恭子)

(写真上)ほぼ完売したカヨコユウキのブース。絵画は西村有。