サハリンロックNYに響く

帰ってきたOKI

アイヌ現代音楽が炸裂

 ジャパン・ソサエティーでコンサート『OKI:アイヌの音楽』が6日夜に開催された。OKIはアイヌの伝統楽器トンコリの伝承者で、ベーシスト、彫刻家、ペインター。これまでにソロ、バンド、ダブミックス版などを含む合計20枚以上のオリジナルアルバムを発表。音楽プロデューサーとしてもアルバム23作を出すなど大活躍している。伝統的なアイヌの音楽や歌をレゲエやロックのエレキサウンドで演奏し、伝統楽器ムックル(口琴)もコンテンポラリーミュージックサウンドに早変わり。

 「愛と憎しみの街に帰って来ましたよ」とジョークを交えて英語で挨拶した後、全編、英語でもなく日本語でもないアイヌ語で歌いまくったその歌声は鮮烈に胸に突き刺さり、エレキトンコリと女性ボーカルユニット、マレウレウのRekpoの抜群の歌唱力とドラムスのManaw Kano、ベースの中條卓の絶妙なエネルギーをサウンドエンジニアの内田直之が見事に昇華させた13曲1時間半のロックコンサートとなった。ウクライナへの思いを歌った「City of Kiev」、熱唱した最後の「サハリン・ロック」では会場がスタンディングオベーションの熱気に包まれた。

 OKIは、1957年生まれ。本名は加納沖。東京藝術大学美術学部卒業、ニューヨーク大学映画科を修了。平成20年に北海道文化奨励賞を受賞している。演奏直前の楽屋でOKIは自身の音楽活動の原点についてこう語った。

 「1987から6年くらいニューヨークにいた。そもそも来たのが、なんかアイデンティーに苦しんでいたころで、ニューヨークに来てしまえば関係ないかなって、来てみたら、直接かどうかわかんなけど外から見た、客観的に日本やアメリカのいいところ悪いところ、足りないところが、見えて、いいか悪いかのジャッジメントに確実に影響したね。みんながいいよって言ってるんじゃなくて、棲み分けしていて、ニューヨークにはいろんなコミュニティーがあるのが分かって、アメリカ先住民のコミュニティーもNYにあるわけ。そこで友達になって、その知り合いのつてでナバホインデアンの居留地の政府があるアリゾナのウインドウーロックやさらに西のキコツボミと言ってホピインディアンの大地まで全部ヒッチハイクで行って遊んでたんだけど友達の家族と。そしたらその時だね、それまで日本人とかアイヌとか面倒くさいって思っていたのが、満天の星の下でコヨーテの鳴く声を聞いて、西部開拓史以前の時間の感覚の歪みみたいなものを感じて、おぼろげだけど、いつか自分のルーツに向かい合うのもありだなって、ほんと、おぼろげだけど思ったんだよねその時。それがきっかけで逆にポジティブになったんだな」。(三浦良一記者、インタビュー写真も。舞台写真はAyumi Sakamoto 撮影)