愛と友情をエネルギーに Tolkien

「The Lord of The Rings「(指輪物語)、「 The Hobbit」(ホビットの冒険)の著者、J・R・R・トールキンの若かりし時代を描く伝記もの。夢とロマン溢れるいくつもの壮大な物語を生み出したトールキンが歩んだ道とは一体どんなものだったのか。誰の影響を受け、どんな試練を超えて人々に希望と夢を与える世界を作り出せたのか。
類い稀な才能を持っていたには違いないが、その原石に磨きをかけるのは経験であり試練だ。物語はトールキンの半生を追うとともに、校友たちとの友情と絆を強く印象付ける。
主人公トールキンにはイギリス俳優ニコラス・ホルト。「X-Men」シリーズのハンク・マッコイ/ビースト役で知られるが、人間味あふれるゾンビを熱演した「Warm Bodies」(2013年)はホルトの演技力を見せつけた。トールキンの初恋の相手でのちに妻となるエディスにはミュージシャン、フィル・コリンズの娘で「Rules Don’t Apply」(ハリウッド・スキャンダル、16年)のリリー・コリンズ。脚本は「Don’t Go」(18年)の監督・脚本デイビッド・グリーソン。監督はフィンランドで最も成功を収めている監督の一人で「トム・オブ・フィンランド」(17年)のドメ・カルコスキ。
トールキンは幼いころ父親を亡くし、弟と母親の3人で暮らしていたがその母親も他界し、一家が親しくしていたモーガン神父が保護者となった。教育熱心だった母親の影響で低学年からラテン語を学び有名校バーミンガムのキング・エドワード・スクールで勉強を続けた。
トールキンの想像力逞しい幻想の世界を作り上げる力は母親の影響が大きかったともいえる。母親はトールキンと弟に動作を加えながら様々な物語を読んで聞かせた。おそらくその中には彼女自身が創作した物語も含まれていたことだろう。
トールキンの人生で最も特筆すべき事柄は学校で出会った3人の友と胸ときめかせたエディスの存在だ。校友はトールキンに両親がいなくても経済的に豊かでなくても見下すことなく心通わせ、闊達な意見を交わし、自由精神をはぐくんだ。まさにこれらがトールキンの原動力の源だ。1時間51分。PG-13。(明)

■上映館■
AMC Empire 25
234 West 42nd St.
AMC Lincoln Square 13
1998 Broadway
Cinepolis Chelsea
260 W. 23rd St.