逆転のサバイバル The Hunt

逃亡の途中、兵士に連行されるクリスタル(手前、ギルピン)
PHOTO : Patti Perret/Universal Pictures 

 人間が人間を狩る究極のハンティングゲーム。作家リチャード・コネルの短編「The Most Dangerous Game」にヒントを得、政治風刺をテーマにした作品だ。 

 当初、昨年9月に公開予定だったが、8月にエル・パソ、デイトンなどで数十人が死傷する乱射事件があったため、銃殺シーンが多い本作への批判が高まり公開延期となった。が、今度はタイミングがコロナウイルス騒動とぶつかり、劇場成績がとこまで伸びるか不安材料となっている。 

 ハンティングで「狩る」のは富裕層リベラルで「狩られる」のはトランプ支持者を代表する保守系。ヒラリー・クリントンが2016年大統領選で呼んだ「嘆かわしい人々」、つまり人種差別、性差別、ホモフォビアなどに染まる人々、ということになるのだが。物語で登場人物の一人をジョージ・オーウエル著「動物農場」のスノーボールに例える会話があるが、これはいささか勇み足的かも。 

 「狩る」側のリーダーに扮するのはアカデミー主演女優賞を2度受賞しているヒラリー・スワンク。「狩られる」側のメインキャラ、クリスタルにはベティ・ギルピン。ネットフリックスの人気ドラマ「Glow」(Glow:ゴージャス・レディ・オブ・レスリング)でリバティー・ベルを熱演する注目女優だ。 監督は「Z for Zachariah」(15年)などのクレイグ・ゾベル。ホラー系作品が多いブラムハウス・プロダクション製作だけに、グロテスクなシーンをおかしさで味付けしたようなを軽さもある。 

 全米から集められた「獲物」12人が野原で目を覚ます。目の前にはナイフや銃などが入った箱があり、突如として、急襲が始まる。さまざまな仕掛けや、偽の立地、町の住民を装う敵などが入り乱れ、次々と獲物が殺されていく。しかし「狩る」方が必ずしも筋書き通り目的を達成するとは限らない。しかも物語は当然、どちらが正義でどちらが悪というものでもなく、風刺の部分はいささかぼけるがギルピンのパワフルな演技には拍手。1時間40分。R。 

      (明) 

https://www.universalpictures.com/movies/the-hunt

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