生き残りへの挑戦: PLANE

 旅客機事故のパニックものと生き残った乗客を身代金目的で略取する武装勢力の残虐性というダブルの恐怖で全編を綴るアクション・スリラー。あまりこれといった作品に恵まれなかったジェラルド・バトラーが本作では自分の身を投げうって全力で乗客を守ろうとする熱いパイロットを好演。アメコミのスーパーヒーローにはない、あくまで泥臭い人間味溢れるヒーローの誕生だ。

 トレイルブレーザー航空のパイロット、ブローディ(バトラー)は大晦日にシンガポール発、東京経由、ホノルル行きの機長として搭乗した。妻が亡くなってから大学生の一人娘とも疎遠になり、心痛めていたが娘の方から正月はホノルルで一緒に休暇を過ごしたいと連絡があり久々に心が弾んでいた。

 200人弱を収容できる機体だが、時期とルートの関係で実際の乗客は14人。ただし、急に2人追加となる。15年前に殺人容疑で逃亡し、最近、シンガポール近郊で捕まったルイス(マイク・コルター)という男と彼を米本土まで護送する連邦保安官だ。

 東京までのフライトは6時間半程度だが、離陸から1〜2時間はかなりの悪天候が予想され、ブローディは本社の担当者に少し飛行ルートの変更を要請したが承認されず、そのまま出発。途中、落雷にあうもなんとかジャングルに不時着した。

 回りには何もなく、通信機器も壊れていたため、ブローディは救助を求めるために周辺の探索を始めるが、その間に、乗客はジャングル付近を拠点としていた反政府武装勢力に拉致されてしまう。皮肉にもブローディにとっての唯一助っ人はルイスだった。

 不時着シーン、武装勢力への切り崩しシーンなど緊迫感溢れる場面の連続で思わず、身を乗り出してしまうほど。かつて機内で暴れる乗客をねじ伏せた熱血漢キャプテンのブローディと元軍人で殺人容疑も訳ありの冷静沈着なルイスとの好対照コンビ。キャラクターを十分に引き出した展開も物語を一層面白くする。監督は「Blood Father」のジャン=フランソワ・リシェ。1時間47分。R。(明)

(写真)武装勢力のアジトに潜り込むブローディ(バトラー、左)とルイス(コルター)Photo : Kenneth Rexach/Lionsgate


■上映館■

AMC Empire 25

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312 W. 34th St.