戦火に向かう使命と勇気 1917

軍部隊に向かうブレイク(チャップマン、左)とスコフィールド(マッケイ、右)
Photo : François Duhamel / Universal Pictures and DreamWorks Pictures

 第一次大戦中、隊長からの重要メッセージを携え、敵の戦火をくぐり抜けながら友軍部隊のもとへと走る二人の若きイギリス兵士を描く戦争映画。
 監督・脚本のサム・メンデス(「アメリカン・ビューティ」「007スペクター」)が第一次大戦の史実を背景に父方の祖父から聞かされた話をもとに書き上げた物語で1917年ドイツ軍が西部戦線で軍の物資不足や兵士の疲弊などのためにヒンデンブルグ線に撤退したアルベリッヒ作戦の時期に合わせている。
 メンデス監督は臨場感を最大限に出すために長い間カメラを回し続ける長回しを使っておりワンショットテイクかと思わせるほど精巧な出来上がりだ。撮影監督は「ブレードランナー2049」でアカデミー撮影賞を受賞しているロジャー・ディーキンス。
 命を懸けてメッセージを届ける二人の兵士にはジョージ・マッケイとディーン=チャールズ・チャップマン。ハリウッドではほぼ無名に近い若手が新鮮味を発揮する。コリン・ファース、ベネディクト・カンパーバッチ、マーク・ストロングら有名どころは出演場面も少ない脇に徹している。
 1917年4月、フランス北部。兵士ブレイク(チャップマン)は軍司令官(ファース)から、別の場所にいる友軍部隊隊長に明日朝までに重要な書簡を届けるよう命を受ける。書簡の内容は友軍部隊が翌朝に計画している敵軍への進行作戦の停止だ。
 ドイツ軍は地雷やブービートラップを仕掛けており、そのまま友軍部隊が進行すれば1600人の兵士が犠牲となる。しかもブレイクの兄がその部隊に所属しているのだ。敵陣を突破して友軍部隊にたどりつくのは不可能に近いが二人に選択の余地はない。
 地上戦、空中戦などのいわゆる戦争シーンに対極するのは静かで平和な田園風景や一人の兵士が透き通るような声で歌うフォークソングにじっと耳を澄ます兵士らの姿など。その動と静のコントラストが印象的だ。アカデミー賞候補入り確実の作品だ。1時間50分。R (明)

https://www.1917.movie/


■上映館■
Regal Union Square ScreenX & 4DX
850 Broadway
AMC Lincoln Square 13
1998 Broadway