編集後記 2022年12月3日号

【編集後記】

 みなさん、こんにちは。ニューヨーク州は11月21日、日本では所持や譲渡が犯罪として厳しく処罰される大麻が、条件付きで36件の成人用大麻専門薬局に販売許可を承認しました=今週号1面で記事=。今回承認を受けた36件のうち、28人は大麻関連の逮捕歴がある個人で、8件は非営利団体。NY州の大麻関連の法律は不平等是正や貧困・犯罪対策としての位置付けがあり、得られる税収は貧困対策などに重点的に回されることになっているそうです。しかし、合法化以前に法律を犯して逮捕された者に優先的に大麻の販売の権利を与えるというよく理解できないような法律の交通整理に首を傾げます。それもこれも莫大な税金収入があることが背景にあるものとみられます。マリファナ・ビジネス・ファクトブックは米国での大麻の年間小売売上高は今年330億ドル(約4.5兆円)を超え、26年には520億ドル(約7.2兆円)を超えると予測。雇用数は現在の約52万人から26年には80万人を超える見込みで、経済効果は2022年でおよそ1000億ドル(約14兆円)、26年には1580億ドル(約22兆円)ほどになる可能性があるとしています。国民の健康を「アヘン戦争」の犠牲者のような危険にさらす一方で、巨額の富を手にするのは一体誰なのでしょう。「得られる税収は貧困対策などに重点的に回されること」はうまくいくのか心配です。ニューヨーク日本総領事館では、大麻について在留邦人に「絶対に手を出さないよう」領事メールやホームページ(HP)で注意を呼びかけています。「日本の大麻取締法では、国外における栽培、所持、譲受、譲渡したりした場合などに罰する規定があり、『罪に問われる場合がある』ので、在留邦人に対しては日本の法律を遵守し、大麻が合法化されている州にあっても、絶対に手を出さないように」と呼びかけてます。気になるのは、では海外の在留邦人が、具体的にどのような場合に罪に問われるのか。警告の仕方が曖昧ではっきりしないのは「取り締まりの手の内を明かすことになる」のでそこはどうやら非公開でわざとぼかしているようです。想像するに、治外法権により、大麻所持などが合法化されている海外の土地で日本の法律が適用されて逮捕されることはないが、帰国した時に、もし仮に入国審査官に別室に呼ばれるようなことがあり「ニューヨークで大麻を吸ったり、買ったり、所持したり譲渡したことはありますか」と聞かれた時に「はいあります」と答えると「海外においても日本の法律を破ったこと」になり日本国内入国後、即逮捕になるものと思われます。アメリカは、小学校低学年から「NO DRUG」教育を徹底しているのになんだか今回の大麻合法化には矛盾を感じますね。それでは、みなさん、よい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)