編集後記 6月8日号

第49回ニューヨーク日系人会(JAA)奨学金授与式が5月30日、ハーバードクラブで開催されました。大学生13人と大学院生4人に総額10万ドルの返却無用の奨学金が贈られました。40年前、同じく自身も奨学金を受けたというJAAのスーザン大沼会長が挨拶で「私は当時もらった奨学金は300ドルだった。それで電動タイプライターを買って勉強した。当時と比べて額が大きくなった。どうか皆さんも勉学に役立てて」とエールを贈っていました。ニューヨーク総領事の山野内勘二大使が祝辞を述べたあと、アジア系として初めてニューヨーク州裁判所判事になったデニー・チンさんがプリンストン大カラーのネクタイで記念講演しました。奨学金受給者を代表して我妻美杏さんと安間裕璃恵さんの二人がスピーチしました。安間さんは日本で両親の離婚を境に高校時代に引き蘢りになってしまい、母親が娘のことを思って母娘で渡米、クイーンズカレッジに合格して大学で日本人学生会を組織するなど積極的に社会ともかかわり、将来は心理カウセラーとして社会に貢献したいと述べると会場から大きな拍手がわき、なりやみませんでした。アメリカで大学に行くのはとてもお金がかかります。親も子供も借金だるまです。帰国が前提で滞在している日本人駐在員家庭のみならず、最近は、永住者家族のなかでも、子供を日本の大学へ送る傾向が高まっているようです。日本の私立大学が値段が高いといってもアメリカのアイビーリーグの4分の1か5分の1です。国立大学なら年間の学費も60万円以下でしょうか。日本の大学も少子化で、優秀な生徒の取り合いです。海外での学校説明会も盛んです。海外の日本人子弟の入学者が欲しい日本の大学と、アメリカよりも学費が安くて質の高い日本の大学に入れたい在米邦人家庭との双方のニーズが合致した稀なケースです。いい教育を子供に受けさせた親にとっては、新たな選択肢が増えているといってもいいかもしれません。奨学金制度など若者を応援する日系団体、日系企業の社会貢献活動を報道することで少しでも側面援助ができれば幸いです。(「週刊NY生活」発行人兼CEO三浦良一)