編集後記 1月26日号

みなさん、こんにちは。アメリカに住んでいれば、トランプ大統領が連邦政府の一部閉鎖による職員の給与未払いを人質に取って議会の譲歩を引き出そうと攻防が続けられているメキシコ国境との壁建設問題をめぐる来週火曜日の年頭教書演説の行方が気になるところですが、日本からの新聞を読んでいて、もっと気になるのが、日本の海上自衛隊の哨戒機の低空飛行を問題とする韓国の国防省と日本の海上自衛隊との水掛け論のやりとりです。韓国の国防省は24日、日本の哨戒機が東シナ海で韓国海軍艦艇に対して低空で「威嚇飛行」を行ったとする場面の写真を5枚公開しました。事件は昨年12月20日、海上自衛隊のP1哨戒機が公海上の韓国艦艇に対して韓国側は高度60メートル、距離540メートルまで接近する威嚇飛行をされたとし、日本側は高度150メートル、距離500メートル以上を確保し「国際法規や国内法にのっとり適切な運用を行っていたにもかかわらず(ミサイル発射を前提とする)火器管制レーダーを照射された」と抗議、その後も双方で「威嚇された、レーダー照射はしていない」、海上自衛自衛隊側はレーダー照射を探知した音を公開、韓国側は「実態を知ることができないただの機械音だけ」とまっこうから否定して、自衛隊機が低空飛行したという写真を今回公開、「機械は嘘をつかない」と記者会見で述べています。これに対して日本側は「韓国側とさらに言い争うようなことは避けたい」として自衛隊側の飛行記録は公表しない考えを示しています。「言ってもしょうがないからもういいわ」という感じです。しかし、それだと、言った方の論理が通ってしまうのが国際関係上の常です。慰安婦問題も言ったもん勝ちみたいな状況でどんどん米国に日本を非難する少女像が建てられています。国連で非難までされてしまいました。その時その時に理不尽だと思った時には徹底的に反論して資料を公にして身の潔白を照明する努力をしないと負けます。悪者にされます。被害を被っても「もともとは、あんたが悪い。自業自得だ」となってしまいます。しかもこういうミリタリー同士の偶発的な衝突が、どっちが正しいかわからなないまま「とにかく相手が悪いにきまってる」という論理でお互いにナショナリズムに走って戦争になっていくことが多いのではないでしょうか。なんか、アメリカに住んでいても太平洋の向こうでパチパチ火花を散らしているアジアの妙な緊迫感が気になってしょうがありません。火器管制レーダーというのは照射されたら、ミサイルはそれに向けて命中するまでどこまでも追い掛けてくる怖い装置です。それを18秒間照射された方は「威嚇された」どころか生きた心地がしなかったことでしょう。俊敏な戦闘機でも逃げ切れない装置ですから、鈍速の哨戒機では「即、数秒後の死」を意味する訳ですから、そんなもん照射されたら怒るのは当たり前です。でも日本人は怒ることを忘れてしまったんですね。怒りを抑えることが真の冷静さなのか、よく分からなくなってきます。ああ、ペンはしかし剣より強しでした。日本の外の「外野」席からですが、小さな声でも、あげ続けていけたらと思います。私には筆力がないですが本紙執筆陣には論客が結構いますから。それでは、みなさんよい週末を。(「週刊NY生活」発行人兼CEO三浦良一)