ピンチの今がチャンス 経営発想の転換を

竹中パートナーズ代表

竹中征夫さんに聞くポストコロナ対応

 世界最大の会計事務所に日本人第一号として採用され、金融機関を始め、自動車からカップ麺まで日本企業の海外進出を先導し、数々のM&Aを成功させてきたビジネスコンサルタント、竹中パートナーズ代表の竹中征夫さんに、今回のパンデミックを日本企業はどう捉えればいいのかを聞いた。

 「世の中で起こっていることは偶然ではなく必然性がある。今回のように誰もが体験したことのない出来事がなぜ起きたのかを、世の中の目から、家族の目から、会社の目から見ると自ずと理由が見えてくる。そこに教えと将来へのビジョンがある。まず言えることは、必ずこういうことが起こると、もう元には戻らないということだ。すでに次への変化が起こっている。こういうときは、変化、チェンジはチャンスであり、窮地、ピンチはチャンスであるという前向きな考えかたが大切だ。宇宙の原則で、環境の変化が起きた時には生物はそれに適応して変わって行かなくてはならない。氷河期に恐竜が絶滅して爬虫類が生き延びたように。原理原則という根っこは変わらない。環境が変わるのだ。誰もが今戸惑っている。悩んでいる。方向を失っている。でも、その中には、数少ないが、チェンジを好機に変えようとする人がいる。

 数少ない先を考える人には勇気が必要で、今の基本の流れの中で、どう環境に適応していくかを考えなくてはならない。経済では製造とサプライチエーンが今後大きく変わる。中国頼りが行き過ぎてしまった今、アメリカ本国に製造拠点を戻したり、インドとアセアンにもシフトする動きがさらに活発になるだろう。コロナ禍が、アメリカの弱さを露呈した。製造を元に戻すといっても、以前と同じようには作らない。ロボティックの技術がさらに進化していく。米国本土ではメイド・イン・アメリカが再び脚光浴びることになる。ものつくりが得意な日本に大きなチャンスが回って来るはずだ。ものを作るということが今よりももっと評価される。その条件としては日本企業は今まで以上にアメリカに根付いていかなくてはならない。それにはゼロからではなくM&Aが有効だ。マーケットと消費者、カスタマーを持っているのは米国企業。そのリソースを活用させてもらいながら得意分野で勝負することだ。今後何が必要で、マージンの高いビジネスになるか。それはハイプロフィット、ハイクオリティの分野だろう。高齢化が進み、ヘルスケア、医療機器分野でのビジネスチャンスの広がりがある。エアロスペースもまたハイマージンだ。医療、航空宇宙分野で日本の力を生かすべきだ。また日本が持っている食文化は、カルチャーとしてものつくりの付加価値を産んで日本企業の大きな武器となるだろう。食品産業は、これからはレストラン中心でなくてアメリカのメインストリーム、アメリカの一般家庭の食卓にチャレンジしてほしい。消費者が毎日食べるもの。かつて私が手がけてたマルちゃんラーメンは、スーパーでオリエンタルフードのコーナーから外して、キャンベルのスープと並べて売って成功した。これからは冷凍食品、作ってすぐ食べられる商品が狙い目だ。家庭で食べられるものにもっと浸透するような発想でいけば、まだまだ食品産業にチャンスはある。アメリカでビジネスをするなら、メインストリームのアメリカと交わって行てほしい。日本企業はもっとアメリカの主流に入っていくべきだ。自動車産業はその成功例だが、まだまだ他の分野でもメインストリームアメリカ入っていくチャンスはあるはずだ。いま私は米国企業のアジア戦略を担うネットワークを積極的に作っており、日本企業への橋渡し役として貢献できれば幸いだ。何なりと相談して欲しい。(談)