佐々木 健二郎・著 荒蝦夷・刊
そこには、短期間の滞在や旅行、一時的な在留で感じる表面的な日米文化比較の上澄みではない「等身大の生活者として見たニューヨークの時代変遷」を当時の空気そのものをページの一枚一枚に吹き込んで読む者に感じさせてくれるトピックが26編織り込まれている。
1966年夏、マンハッタンのペン・ステーションにメキシコ留学を経て妻の洋子さんと降り立った佐々木さん。知人の紹介でカナルストリートとブロードウエーの角に住む
著者は1936年仙台市生まれ。61年に東北大学教育学部美術家を卒業。66年、メキシコのグアナファト大学インスティチュート・アジェンデ卒業。東北生活文化大学非常勤講師。
「アメリカのベル・エポック(よき時代)とでもいう時代にニューヨークで生きた」という実感がある佐々木さんの目には、アメリカの異質の変化が映り込む。ビルの谷間から見えるニューヨークの景色がどんなふうにこれから変わっていくのか。将来は故郷仙台に暮らしたいという佐々木さん。帰るところがあればこそ見えるニューヨークの姿形、出来事、景色でもある。これからも客観視で自分を見つめながら、定点観測を、キャンバスに、原稿用紙に留めていってほしい。 (三浦)