編集後記

編集後記



 みなさん、こんにちは。ニューヨークの街角でよく見かけるアート壁画。ヒップホップ、グラフィティ、ラップ、ブレイクダンスの4要素が入っていることがアート壁画の条件だ。ニューヨーク市クイーンズのマンハッタンに近いアストリア地区に、アーティストたちに壁画を描く場所を提供している男がいると聞いて、会いに行ってみた。地下鉄駅からイーストリバー方面に歩くこと40分ほどの住宅地の壁に多くの壁画が現れる一角があった。商店街でもない、人通りもない辺鄙な場所に描いて、いったい誰が見るのか。何のために描いているのか?何の意味があるのか?どんどんと疑問が湧いていく。


 自動車修理工場の息子だというその男性、ルイジさん(58)は、現在、父親の建物だった工場を人に貸し、自分は、若い世界中のアーティストに地域の商店や住宅主、工場主、ビルのオーナーと掛け合って壁画を描く場所を提供するのが目下の仕事だという。グラフィティアートは、元々は、地域のギャングが自分たちの縄張りを示すために「タギング(タグをつけるという意味)」のスプレーでマークを塗りつけていったのが始まりらしい。ルイジさんの自宅や工場の壁も、その落書きのようなスプレーマークで汚されまくっていた。この壁に絵を描いたら、落書きはされないのではないか。そう思ったルイジさんは、いくつかの壁にアート作品を若手アーティストに提供して描いてもらった。タギングはピタリとなくなった。


 アストリアの一角に、KOIUSUKE, SHINJIRO TANAKA、KANAKO、MAIKO YOSHIZAWA, SHIRO という日本人アーティストたちが描いたという作品を道路を渡りながら案内して見せてくれた。「こんなところに描いて誰が見るかって?地域の住民だよ、そして今では、インスタグラムやSNSを通じて世界中の人たちが見ることができるんだよ」。アーティストに無料で場所を提供してボランティアで絵を描いてもらっているのだという。


 「ミミ」というぽっちゃり系の女の子を描いた大きなアートが交差点の反対から目に飛び込んできた。「これはSHIROが描いた絵だよ。彼女はニューヨークに住んでいるよ」ルイジさんはその場で電話で連絡、すぐに本人につながった。翌日、SHIROさんに会いにサウスブロンクスに行った。土砂降りの雨の中をSHIROさんは自転車を漕いでやってきた。少し雨が小降りになったので、先月描き上げたばかりだというマクドナルドの屋外駐車場に描いた「ミミ」の前で写真を先に撮影して話を聞いた。SHIROさん(49)。これまでに世界23か国、68都市でグラフィティアートを描いているバリバリのプロアーティストだった。ニューヨーク市内にも、いくつ自分で描いたかわからないほど壁画があるが、今でも20か所くらいは残っているという。今週号の1面の写真と19面の「NY生活ウーマン」でそのドラマチックなアートライフを紹介した。それではみなさん良い週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)