地方警察とICE連携 NY,NJ,CT州は拒否

 トランプ政権のもとで、地方警察と連邦移民・関税執行局(ICE)の連携が急速に拡大している。背景にあるのが「287(g)協定」と呼ばれる制度で、連邦政府が地方警察や保安官事務所に移民法執行権限の一部を委任する仕組みだ。訓練を受けた警官は、通常の警察活動のなかで移民資格の確認やICEへの引き渡しに関与できるため、スピード違反やテールランプ切れなどの軽微な交通違反が移民摘発のきっかけになるケースが増加しているという。地方警察を利用してICEの手足を全米に広げた格好だ。

 連邦政府は地方機関の協力を促進するため、訓練費や人件費、残業代などを補助する制度も拡充している。地方自治体にとっては財政支援を受けながら法執行能力を強化できるメリットがある一方、人種や民族的背景による職務質問が増えるのではないかとの懸念も根強い。

 「287(g)」とは移民国籍法第287条(g)項に由来するもので、不法移民の増加への懸念や麻薬密輸などの犯罪対策のため1996年に制定された。当初は参加する自治体は皆無だったが、2001年の同時多発テロが発生すると関心が高まり2011年に72の自治体が参加した。バイデン政権末期で16州で約135件だったが、第2次トランプ政権発足後に急増し、現在では31州で1200近い警察機関・保安官事務所が参加する大規模な制度となっている。特に南部を中心に広がっており、フロリダ州、ジョージア州では多数の郡保安官事務所や警察機関が参加している。特にテキサス州では人口10万人以上の地域の機関は今年12月1日までに協定締結を求められるなど、単なる推奨ではなく、州法で事実上の参加拡大を進めている。

 全米では高速道路や一般道路が移民取締りの現場となる地域が増える一方、北東部では逆に地方警察と移民当局の取締りを分ける動きが強まっている。ニューヨーク州やニュージャージー州、コネチカット州などは移民保護政策を維持しており、南部州とは対照的だ。

 ニューヨーク州では、民主党が多数を占める州議会が地方警察による287(g)協定を禁止する法案を可決、5月28日にホウクル知事が署名し成立した。ニューヨーク市をはじめ同州の多くの自治体では、単に移民資格を理由として住民を拘束することは認められていない。しかし、一部の郡や自治体では連邦当局との協力事例があり、交通違反の取り締まりが結果的に移民摘発につながったケースが報告されていた。

 ニュージャージー州も移民保護に積極的な州の一つで、州司法当局は地方警察がICEの業務を代行することに否定的な姿勢を示してきた。コネチカット州でも同様に、州レベルでは移民コミュニティーとの信頼関係を重視する方針が強く、南部州のような大規模な参加は見られない。

 移民問題をめぐる対立は地域の交通取締りや警察活動のあり方にも広がっており、各州の対応は大きく分かれているのが現状だ。