装いの世界基準を知る

安積陽子・著
講談社新書・刊

 なんともドキリとするタイトルだ。まずはこの本を書いた著者の安積陽子(あさか・ようこ)さんの紹介から。
安積さんは、シカゴで生まれ、ニューヨーク州立大学イメージコンサルティング科を卒業後、ワシントンDCで非言語コミュニケーションを学んで世界のエリートたちが、政治やビジネスのあらゆる場面で、非言語コミュニケーションを駆使している事実を知った。2005年からニューヨーク・イメージ・リソース・センターで、エグゼクティブ、政治家、女優、モデル、起業家を対象に自己演出に関するトレーニングを開始、2009年に帰国して同センター日本校代表に就任、2016年には一般社団法人国際ボディランゲージ協会を設立、現在、日本国内外で非言語コミュニケーションの研修やコンサルテイングを行っている。
 この本は、男性のお洒落について書いているものではない。服装と立ち居振る舞いといった「外見」で、その人物が最初に評価されることが多い、その事実の重大さについて書いていると言っていい。「内面と外面が一致した時に現れる特有のオーラや自信がその人の魅力を一段と引き立たせてくれる」という。確かに、働いている時の職業人、プロフェッショナルの装いは、その職業が何であれ、その人を輝かせ、実に美しく見えるようにするものだ。この本で安積さんは、その人が、その人として正当に評価されるためには、世界に存在する「装い」と「振る舞い」のルールを知ることが大切だと述べる。
人間の魅力は、外見から瞬時にして相手が判断する「信頼性」と「好感度」に大きく影響を受けるそうで、京セラの稲盛和夫さんが「外見はその人の一番外側の中味」だと言った言葉を引用しながら日本や海外の政治家、芸能人など著名人の服装とたち振る舞いについて辛口で批評、紹介している。安倍首相がスーツ姿で、足を組んだ時に靴下が白かったことやオフィシャルな場で皮の紐靴ではなく、スリッポンを履いていたことなどを場違いでルール違反であると鋭く指摘している。このほか日本の服装の常識が世界の非常識という最近の例として、日本人の黒いスーツにも言及している。マンハッタンですれ違う日本から出張で来たであろう日本人ビジネスマン&ウーマンたちの集団スーツが一様に黒なのには閉口する。日本でリクルートスーツとして定着しているようだが、こちらで「黒」は喪服かフォーマルな席での装いに限定されるからだ。靴下に神経を使い、靴の踵はパーフェクトにして、ビジネススーツはビジネスパーソンの戦闘服と思えば、おのずととんでもない恰好にはならないはず。大手企業の看板やジャパンブランドに頼って生きる時代は過ぎ去った。「個の力で世界と勝負できる人間の魅力を持つことが大事」と力説する。

(三浦)