速読で即理解の手引き

齋藤 孝・著
ちくま新書・刊

 著者は、テレビのコメンテーターなどでもお馴染みの明治大学文学部・齋藤孝教授。『語彙力こそが教養である』など著書は多数ある。
 冒頭、同書は「超速読力」を次のように定義する。「『超速読力』とは本や書類を見た瞬間に内容を理解し、コメントを言えるという新しい力。」まさに、スピードが求められる今の時代に誰しもが必要な力と言えよう。さて問題は、「超速読力」をいかにして身につけるか? である。その疑問に丁寧に答えてくれる一冊だ。
 同書は大きく六章に分かれている。まず第一章は基礎編として、その「心構え」について説く。特に印象的なのは、筆者は、「最初から順番に読むという呪縛から解放されること」を提唱する。例えば、会議で出された資料に目を通し、内容を理解した上でコメントする場面に遭遇した場合、資料に最初から目を通す時間はない。この時、著者は「狩猟型読書」をすすめる。それは、狩りに例え、本という森に入った途端、目に入った獲物をとりあえずつかまえる。「何でもいいからとりあえずつかまえる、という読書法だ。結果、時間切れになり、結論が分からないまま終わることはない」と説明する。ただし、これだけでは成立しない。読んだ内容を理解し、かつコメントが言えるようになるためには、ある訓練が必要になる。それは、時間を限定することだ。紙を見ることができる時間は15秒、その後コメントを述べる。ただ読んだ気になるのではなく、コメントが言える内容を読み抜く。これが「超速読力」の大きな特徴とする。
 第二および三章では「超速読」の方法について具体的に説明する。誰にでも簡単にできる方法とは何だろうか。同書によると、新書やビジネス書の速読には「はじめに」を最初に読み、目次から何が書かれているか全体の構成を把握し、本文の小見出しをパラパラと見ていくという。これによって、必ずしも本文を読んでいなくとも、何となく全体像が理解できるというわけだ。また大切なポイントとして、予め頭に入れた全体像から類推される重要箇所に線を引きながら読むこと、などを挙げる。学生やビジネスマンには必須のスキルが満載だ。
 ここまで同書を読むと、「超速読」がいかに重要なスキルで、またその身につけ方についても理解を深めることができる。第四章では「超速読」の具体的な鍛え方を伝授。資料を15秒で読むトレーニング方法は、今日から実践できる。
 第五と最終章では、高度な「超速読力」として、小説や古典を味わい、「深い本質にふれる力」を身につける方法を解説する。そのやり方とは…。研究者として膨大な本を読んできた著者だからこそ編み出せた方法なのだろう。特に古典作品を読む上では、「作品を最初から読んでいくのではなく、いちばん肝心なところをセレクトして味わう」。実に新しいやり方と言えるのかもしれない。終わりに、読むためだけにとどまらない、速読力の効用についても触れている。効果的に本を読むためにも、一度は目を通したい一冊だ。(市川)