在米邦人に日本語で診療を続ける

第14代米国日本人医師会会長になった

加納 麻紀さん

 このほど米国日本人医師会(JMSA)の第14代会長に就任した。神奈川県鎌倉市生まれ。3歳で両親とともに来米し、ニューヨーク州ウエストチェスターのスカースデール、チャパクァで育つ。コーネル大学、マウントサイナイ医科大学卒業後、同大学とNYUメディカルセンター共同の定員4名の超難関プログラム、内科・小児科専門医養成・研修プログラムを修了。内科及び小児科両部門の専門医資格を有する医師は全米でも極めて少数だ。医大時代に米国日本人医師会から自身も2度にわたり奨学金を受けた経験がある。

 前職まで同医師会の副会長兼、2007年に創設の「日系コミュ二ティ支援委員会」(JCOP) 委員長を15年間務めるなど、米国日本人医師会の中核的リーダーとして活躍してきた。二児の母でもあり、2003年最初の出産後、日本語での子育てサークルの必要性を感じて同年9月、非営利の育児支援サポートグループ「NYすくすく会」を創設。月1回のセミナーでは、NY周辺在住の妊婦や母親を対象に、医療、母乳、しつけなど、さまざまな出産、子育てのトピックを取り上げている。

 現在、東京海上記念診療所のハーツデール診療所で内科と小児科の両部門で診療を行っている。加納さんは25年以上にわたり米国人だけではなくニューヨークを中心とする日系企業の駐在員・家族・旅行者・永住者に向けて日本語による医療を提供し続けている。その気さくな人柄と優しい心遣いが多くの在米邦人の心と身体を支えている。2013年からは慶応義塾ニューヨーク学院 (高等部) のスクールドクター (校医)も兼務している。

 加納さんのJMSAの最初の記憶は、1993年に奨学生として年次晩餐会に出席した時のことだ。「当時医学部の2年生だった私は、おずおずとエセックスハウスのボールルームに入ると、興奮と緊張、そして感謝を同時に感じながら、ボールルームを見渡したのを覚えています。華やかな集まりの中で、自分は部外者のように感じ、JMSA奨学金を授与されたことをとても嬉しく思いました」と振り返える。

 安西弦博士が理事長をしていた頃、ある理事会で新入会員を増やすにはどうしたらいいかという話になった。「ワインとチーズの会」を開いてはどうかという加納さんんの提案に、安西氏は快く応じてくれた。「ワインとチーズは、JMSAの主要な目的の一つである、人と人がつながり、一緒になるための最良の方法であることは誰もが知っているので、このワイン&チーズ・パーティーを再開したいですね」と笑顔を見せた。就任スピーチの最後に、奨学金を受ける学生たちに「私は学生や新しい世代の会員に、JMSAが皆さんの斬新なアイデアを尊重し、実行する意志とエネルギーがあればサポートする組織であることを強調したいと思います」と話した。30年近く前に緊張した面持ちでそこに座っている自分にまるで話しかけているようだった。(三浦良一記者、写真は本人提供)

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