魂の響きを舞台に賭けて

ケイコフジイダンスカンパニー主宰
振付師 舞台芸術演出家
ダンサー・ダンス講師

ケイコフジイさん

 ダンサーで振付師として日米で活躍するケイコフジイさん。空港出入国時、セキュリティーポイントを通る際に、パスポートと共に必ず手に持っている書類がある。身に付けている貴金属や財布などをトレイに入れて金属探知機を通ると必ずブザーがなる。口で説明しても時間がかかるので、見せるのがレントゲン写真。両方の股関節に大きな金属が埋め込まれている。サイボーグ状態の股関節写真を見て検査官は笑顔で通してくれる。ダンサーに故障はつきものだが、長い年月で肉体の限界を超えた。
 今月19日から21日まで、マンハッタンのギブニーで「魂響 ソウル・バイブレーション」=写真下=を公演する。ニューヨークでの舞台は1987年6月のリンカーンセンターでの初演「やまと」から数えて13回目、今年で35周年を迎える。
「自分が振り付けから演出、オーディションなど何から何まで全部一人でやるのはもうこれが最後の舞台になるかもしれませんねえ」と他人事のように笑う。
 舞台のコンセプトは「心の沈黙に耳を傾ける」。「誰の心の中にも存在する何かに向かって燃える炎」を訴えかける舞台。
 もともとは、大阪教育大学を卒業して大阪府吹田市千里第二小学校の教員をしていた熱血教師だった。6年の春休みに2週間の休暇でハワイに来た時に立ち寄ったダンスセンターでの体験が人生を変えた。マーサ・グラハムと並びアメリカン・モダンダンスのイコンともいえるベティー・ジョーンズに出会ったのだ。新学期から小学1年の担任が決まっていたが「10年後より今」と退職。81年、ジョーンズ・ルディンダンスセンターにダンス留学した。4年後に帰国。ダンススクール、スタジオKを創立、ケイコフジイダンスカンパニーを結成。ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルス、アトランタ、ハワイで、自らのダンスカンパニー公演を行ってきた。関西を中心に現代創作ダンスの第一線で活動を続ける一方、ゲストアーティストとしてハワイ大学で教鞭をとり、日米間を行き来しながらダンサーの育成に務める。熱く語る素顔に遠い日の熱血教師の顔を見た。
(三浦良一記者、写真も)

公演情報=「魂響 Soul Vibrations」開催場所はGibney 280 Broadway (Enter at 53A Chambers St.)、電話646・8376809。 9月19日(土)、20日(日)、21日(月)午後8時から開演。入場料は15〜20ドル。後援はニューヨーク日本総領事館、Japan 2019、共催はGibney