銀盤の挑戦者たちを追い続けて

ミズノスポーツライター賞を受賞したジャーナリスト
田村 明子さん

 この春「ミズノスポーツライター賞」優秀賞を受賞した。同賞は、スポーツに関する報道・評論およびノンフィクションなどを対象に、優秀な作品とその著者を顕彰し、スポーツ文化の発展とスポーツ界の飛躍を期待、これからの若手スポーツライターの励みになることを願って公益財団法人ミズノスポーツ振興財団が1990年度に制定した。今年で29回目となる。受賞作は昨年新潮社から出版された『挑戦者たち—男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて—』。この本は、羽生結弦の連覇で平昌五輪が幕を閉じた後、今の男子フィギュアスケート界を支えている国内外のスター選手や、その礎を築いた往年の名選手や指導者を「挑戦者」として群像的に紹介した本で、最終章で平昌五輪男子フィギュアスケートの試合場面が臨場感豊かに再現される構成。
 田村さんはこれまで数々の国際大会で日本人選手たちの記者会見通訳も担当してきた。だがそれは、日本スケート連盟から「お願いします」との依頼を受けてはいるものの、実態は無報酬のボランティアであったことも同書で明かす。
 この本の読者は、通り一辺倒の記者会見での選手たちの発言だけでなく、例えば羽生がどのように闘いたかったのか口にした言葉を、世界に発信した通訳当事者の筆を通して知ることができる妙味がある。「とにかく劇的に勝ちたいという気持ちはすごくあります」という羽生の発言を筆者は英語で「劇的に/dramatic way」と訳したところで外国人記者たちも笑った」というくだりや、会見通訳中に目の前においていたボイスレコーダーに、筆者が訳し終えた直後に羽生が小さな声で囁いた声まで拾っている。
 選手がどのような言葉で自分のスケートを語るのか、それを引き出す役割を著者自身が果たしているオリジナリティーや、日本選手を通してのみフィギュアスケート界を見てはいないこと、トリノ、バンクーバー、ソチ、平昌と4大会連続で出版した、たゆまぬ取材と継続性が評価された。
 自身としては、91年に、アメリカの高校の寮生活の体験を描いた『オークウッドの丘の上で』でカネボウ主催読売ヒューマンドキュメンタリー大賞で入選して以来27年ぶり2度目の受賞。「好きでやってきたことがプロの仕事として認められたことはうれしいし、コツコツやってきたことを認められて励みになる」と語る。「2022年の北京までは見届けたい」と目は東京五輪のその向こうを見据える。(三浦良一記者、写真も)