日本の政治に海外視点を

国際人権プラットフォーム代表理事・弁護士

菅野 志桜里さん

 前衆議院議員の菅野志桜里さん(旧姓山尾さん)が、5月20日夕、ニューヨーク日系人会で、「日本政治の過去と未来 わたしがウクライナ支持を明確にする理由」と題し講演した。東大法学部を卒業して司法試験に合格、検察官になって3年目に担当したのが、河原で生活していたホームレスの60代女性が3人の中学生と30代の無職男性によって殺害された事件だった。弱き者の権利を守ることに目覚めた事件だった。その後、2009年に衆議院議員総選挙に初当選。14年に2期目当選。17年10月に3期目当選。20年3月に立憲民主党を離党。同年7月、国民民主党に入党。現在は、国会議員を卒業して弁護士・国際人道プラットフォーム代表として、日本から世界の人権弾圧の問題に向かい合い、日本が正すべきことは何かを政治の世界や世論に訴えかける活動を行っている。今回のニューヨーク講演も海外から見える日本がどう映っているのかを自分の目と耳で直に感じたかったからでもある。

 「日本は、人権外交の局面が転換したなと思っています。ウクライナの戦争前は、中国で人権弾圧を受けいている人々の救済という面では欧米と足並みを揃えて引き受けていくところまで行っていなかった。それが今回のプーチンの侵略戦争をきっかけに、ウクライナのことに関して言えば、かなりG7の一員としてスピード感を持って、量的にも質的にも足並みを揃えた強い制裁をロシアに課しています。見るべきは、普遍的な人権を守り、行動するというウクライナ戦争に対する姿勢が、今後中国の問題についてもレベルを揃えて対応できるか、そこが岸田政権の真価が問われるところでしょうね」と日本政治の現状を語った。

 海外について「日本政治の欠陥は、選挙が地元に縛られているということ。地元を超えて、日本全国のことを考えたり、海外にいる日本人の存在を考えたりするという意識がめちゃめちゃ薄い。日本の民主主義はまだ成長過程の道半ばにあると言っていい。もう少し、日本の国会議員が海外に目を向け外交に関心を持ってもらいたいところだが、そのためには、『選挙区に骨を埋める』というような世襲的な政治風土を見直し、例えば連続任期は4年までという任期制限をつけることもありだと私は思っている。それによって海外にも目をむける政治家が海外の日本人の声を国政に反映したり、女性の国会議員も増えていくのではないか。でないと、志ある女性はみんな民間に行ってしまう。キャリアの選択肢の一つとして政治家として自分の持てるスキルで社会貢献し、永田町のカルチャーを変えていくことが必要」と自らを振り返って話した。

 菅野さんは宮城県仙台市に生まれ、小学生から大学生時代まで武蔵野市で育った。小6、中1にミュージカル「アニー」の初代アニーを演じ、1986年にニューヨークでその宣伝の一環で真っ赤な衣装を着てマンハッタンを歩いた経験もある。タレント性もあるが「日本の国会はなんであんなにヤジが多いの?」と講演会場で質問が出た時には「私も、安倍総理への国会質問で『保育園落ちた、日本死ね』という匿名のブログを出して質問した時に、匿名だから本当かどうか分からないなどとはぐらかされてヤジにかき消されてうなだれた苦い経験がある。でもそれがきっかけで実名の投稿と支援が増え、政治の端っこにあった子育てが、今は政治のど真ん中にあります」と振り返る。「牛歩戦術などはもうなくなり、国会も変化していますよ」と、日本政治の過去と現在、未来への入り口を分かりやすく解説した。(三浦良一記者、写真も)