寵愛は権力なり The Favourite

シネマ映写室 MOVIE

 18世紀初頭、グレートブリテンとアイルランドの君主だったアン女王と彼女を取り巻くお気に入りたちの物語。「ロブスター」(2015年)「Killing of a Sacred Deer」(聖なる鹿殺し、17年)などギリシャの鬼才と言われるヨルゴス・ランティモス監督の新作だ。 もともと虚弱だったアン女王は晩年、肥満がたたり、歩くこともままならない時期があった。そのフラストレーションも手伝ってか、わがまま放題で大事な国政にも身が入らない。自分の気持ちを引き上げてくれる者をおのずと重用するようになる。つまりは女王の寵愛を得る者は国政をも動かすことのできる権力者になれる、というわけで、いたるところに笑いを散りばめながら悲劇をコミカルに描くいわば悲喜劇のジャンル。
 「ラ・ラ・ランド」(16年)のエマ・ストーン、「The Constant Gardener」(ナイロビの蜂、05年)のレイチェル・ワイズと両アカデミー賞女優が火花を散らす演技はもちろんのこと、気分屋で独善的なアン女王に扮するオリヴィア・コールマン(Hyde Park on Hudson=私が愛した大統領、12年)も圧巻の演技で観客を魅了する。今年のヴェネツィア国際映画祭で作品は審査員大賞「銀獅子賞」、コールマンは「女優賞」を受賞している。
 イギリスは植民地をめぐりフランスと戦争中だが王族、貴族はどこ吹く風でいつも通りの優雅で華やかな生活だ。アン女王にとって幼馴染であり侯爵夫人のサラ(ワイズ)は親身になってくれる話相手であり、時には国政についてのアドバイスまで受ける信頼者で、当然サラは政治的権限をも持つようになる。
 一方、生家の没落で貴族の身分を失ったアビゲイル(ストーン)は従妹のサラを頼って宮廷内で召使いとして働き始める。良く気が付き明るいアビゲイルをサラは気に入り目をかけるが、アビゲイルはアン女王に直接取り入るようになる。危機感を感じたサラはアビゲイルを女王から遠ざけようとするがアビゲイルはこのチャンスを生かしなんとしてでも貴族に返り咲こうと画策する。サラとアビゲイルの確執のうらでアン女王の孤独は一層深まっていく。アカデミー賞候補間違いなしの作品だ。2時間。R。(明)

■上映館■ 

AMC Loews Lincoln Square 13 

1998 Broadway 

Regal Union Square Stadium 14 

850 Broadway 

Cinepolis Chelsea 

260 W. 23rd St.