日本のアニメを背景画で支えた小林七郎NY展

アニメNYCと協力で

会場で流された生前のビデオ

 北海道常呂郡置戸町が生んだ日本アニメ美術界の第一人者で今年8月25日に89歳で亡くなった小林七郎氏を追悼する回顧展「小林七郎-光と闇のドラマ」 展が22日までニューヨークの日本クラブ7階の日本ギャラリーで開催された。18日夕、日本から康子夫人が来米してレセプションが開催され「ニューヨークでの個展開催が小林の長年の夢であり、今日のこの会場で皆様とお会いできることを本人が何より喜んでいることと思います」と小林の手染めの帯を締めて感無量の思いを込めて挨拶した。主催はアトリエ・コバ 小林康子、株式会社J’SHA。キュレーターは佐藤恭子、川添さやか、小澤明美。

 小林氏の代表的作品は「巨人の星」「ムーミン」「ど根性ガエル」「新オバケのQ太郎」「元祖天才バカボン」「ルパン三世 カリオストロの城」「はじめ人間ギャートルズ」「家なき子」「あしたのジョー2」「うる星やつら」など日本の高度経済成長期にテレビアニメや漫画映画を通じて日本中の子供達を釘付けにした名作の数々の背景を手がけたアーティストだ。アニメ史そのものの人生を歩み、国内外のクリエイターや愛好家に多大な影響を与えた小林が、画家として具象と抽象の中に自然の美と無限の力のイメージを追求し続けた世界を紹介し、軌跡を振り返る展示となった。

 小林氏が亡くなる直前に康子夫人が撮影したビデオメッセージが会場に流れた。「アニメという手書きの貴重さというか有り難さこういったことをもっと世界に広めていきたいと思います」と話していた。本展はニューヨークで同時開催のアニメNYCの協力企画ともあって、会場にはアニメファンのアメリカ人も熱心に作品に見入っていた。小林は武蔵野美術大学を卒業後、テレビアニメ創世記の1964年にアニメの世界で活動を始め、31歳で東映動画に入社。68年に小林プロを設立後2011年までの46年間にわたり多くの作品の背景美術を手がけた。2011年に文化庁映画功労賞、2015年と17年にパリで開催されたジャパンエキスポで講演、16年にルーブル美術館での展示、美術専門学校での講演、18年クウェート政府機関主催の講演と実技指導など海外での評価が高まっていた。会場にはアニメ背景作品とともに書き溜めた油彩や水彩画なども展示された。その中には、昭和7年生まれの小林が幼少期に過ごした置戸町を思い浮かべて描いた当時の風景も飾られた。(三浦良一、写真も)

(写真上)オープニングで来場者に挨拶した康子夫人