ウルテリア・ギャラリー アーモリー・ショーで注目

 今年で26回目を迎えるアーモリー・ショーが今月5日から8日まで、ピア90で開催された。日本人として注目すべきはTが初めて出展したことだ。アーモリー側から勧められて決めたそうだから、いかに活躍が目立っているかが分かる。2016年にローワーイーストサイドにオープンした新しいギャラリーで、オーナーの田邊多佳子さんがこれまで評価されて来なかったアーティストに確かな目で光を当てて紹介し話題になってきた。私自身がホワイトボックスでキュレーターを務め2018年春に開催した、55人の日本人アーティストの足跡を展示した「大きな世界を求めて:日本人アーティストとニューヨーク 1950年代から現在」展においても後期「具体」のヨシダミノルによるパフォーマンス映像作品などを紹介して存在感を見せたのは記憶に新しい。

 同ギャラリーが参加したのは「プレゼンツ」というコーナーで、新進ギャラリーが個展か二人展で構成するというもの。田邊さんが選んだのは、ニューヨークを拠点にする二人のアメリカ人アーティストだ。ダグラス・ゴールドバーグは同性愛者で、育ってきた中で感じていた自身のアイデンティティと与えられた環境でのずれのようなものが作品の根幹に存在し、それを「恐怖」と呼んでいる。「見たくないけれど見えてしまうもの」がテーマだ。大理石など硬い素材で布のような柔らかいものを形づくって中身を隠している化のような彫刻作品で観るものの恐れ、驚き、想像力を煽る。メイミー・ティンクラーは繊細で力強い水彩画を描く。日常的なモチーフを自分で再構成してイメージを作るのが特徴で、セレクトした形態によってできた静物画に人体や風景を重ね合わせるような「ここにあるものでここにはない」ものを描くという方法論を確立しているのが面白いと田邊さんはいう。またティンクラーは3月14日(土)からウルテリア・ギャラリーでもニューヨーク初個展を開く予定だ。田邊さんは、「地元のフェアに初めて参加するのでとても楽しみ」と意欲を見せている。

 日本にゆかりのあるギャラリーとしては、昨年参加した名門の小山登美夫ギャラリーやミヅマアートギャラリーが今年は不参加。ローワーイーストサイドに2015年にライナー・ガナールの個展で華々しくオープンしたカイ・マツミヤが昨年創設されたグラマシー・インターナショナル賞を授賞し、ブース費用が免除されてメイン会場である「ギャラリーズ」エリアに出展、ブラジル人のペドロ・ウィルズの個展で勝負した。また香港を拠点にし、例年、草間彌生や具体など力強い歴史的な作品のラインアップで参加のホワイトストーン・ギャラリーは「パースペクティブ」に出展した。

(佐藤恭子/美術ジャーナリスト、キュレーター)

(写真)Douglas Goldberg
Superstar Barbie Fashion Face, 1976
2018
Portuguese Pink Marble 
5 1/2 x 13 3/4 x 12 inches 
(c) Douglas Goldberg; 
courtesy of Ulterior Gallery, NY
Superstar Barbie Fashion Face, 1976