冬の足元に強い味方

イケメン男子 服飾Q&A 63 ケン 青木

 ヴァイブラム・ ソールと呼ばれる、ゴム製の登山靴用ソールとして1937年に誕生した靴底。雪道や氷の上でのグリップが良く、スリップや転倒を防いでくれる心強い味方であるのです。冬場の凍った雪道でのスリップによる転倒は、骨折の危険もあって本当に危険です。
 ヴァイブラムはVibramと綴りますが、日本ではビブラムと称され、「 あ、ビブラムなら聞いたことがある」という方もおられるかもしれません。ヴァイブラム社はイタリアの企業で、社名は創業者Vitale Bramaniヴィタル・ブラマーニの名を短くしたものです。
 実はヨーロッパには歴史的にゴムの木はなく、従って天然ゴムはなく、19世紀末までの登山靴は底に至るまで革製で、水の浸入を防ぐため作りが大変重くなり、またスリップを防ぐ工夫についても、鉄など金属を中心としたものとならざるをえず、そのため靴自体の重さと靴底の氷結によるスリップが避けにくいこともあってか決して一般向けとは言えなかったのでした。
19世紀後半に英国がブラジルからゴムの木の種子を密輸、英国内でゴムの栽培に成功し、当時のアジア植民地政策下、ゴムの木はセイロン(スリランカ)に移植されました。一方、ドイツは英国と対立しており、20世紀初めに化学染料、合成ゴムなど軍需品への貢献を期待して一挙に技術革新を進めたのでした。そして1909年、ドイツにおいて合成ゴムは創られました。
 ヴァイブラムのソールは、底のゴツゴツとしたトレッドから、イタリア語で戦車を意味する、カッロアルマートなどと呼ばれ、アメリカでもタンクソールと呼ばれることもありますが、近年、外見はそれほどゴツく見えないタイプもあり、ぜひ女性の皆さんも安全、そして冬のオシャレのために御活用いただければと。それではまた。

­­­­ けん・あおき/日系アパレルメーカーの米国代表を経て、トム・ジェームス・カンパニーでカスタムテーラーのかたわら、紳士服に関するコラムを執筆。1959年生まれ。