一瞬で心をつかむ会話術

小池リオ・著
ダイヤモンド社・刊

 ニューヨークで活躍する日本人スタンダップ・コメディアン、小池リオさん(55)が、一瞬で心をつかみ、10分会話が続く「つかみイングリッシュ」、『英語は最初の10秒!』をこのほどダイヤモンド社から出版した。担当の編集者からは、ジョーク禁止、爆笑禁止、すべり禁止、とにかくアメリカ人と仲良くなるそれ一点でお願いしますと頼まれた。学校では取るに足らない、たわいのない、くだらない会話は教えないし、習ってもいない。つまらないようなこと、スモールトークと呼ばれるこれらほど、日本人にとってビッグなことはない。

 会話は大体が自己紹介から始まる。自分の名前は何で、仕事は何で、どこの出身で。ただこれだけ言っても普通、誰も関心を示さない。筆者の小池さんが、ニューヨーク生活25年で分かったのは、日本人に本当に必要なのは、「愛嬌のある英語」だということ。

 「私の名前はマイコです」(My name is マイコ)。「マイコー・ジャクソンのようなサウンドです」(Like “Michael Jackson” in English)。「私は踊りませんけど」(But, I don’t dance.)。

 「私の名前はヒデキです」(My name is ヒデキ)。「英語の、ヘディック(頭痛)みたいなサウンドです」(Like”Headache” in English.)「覚えやすいでしょ」( It’s easy to remember. )

 「ネイティブ発音の英語は必要ありません。少し、発音が下手なくらいの方がいいです。その方が相手もゆっくり話してくれるからです。それよりも、一生懸命話すようにしてください」と強調する。

 自分の名前を英語で紹介できたら、出身の地名は、そのまま言っても相手は全く想像できない。北の方の島とかではイメージがわかない。例えば「アメリカの場所で言うと」と、説明を入れるだけでぐんと身近になる。例えば、東京(マンハッタン)、渋谷(シリコンバレー)、新宿(タイムズスクエア)、兜町(ウォール街)、原宿(イーストビレッジ、ソーホー)、丸の内(ミッドタウンイースト)、六本木(ビバリーヒルズ)、池袋(ブロンクス)、品川(ペンステイション)、千葉(ニュージャージー)、埼玉(ペンシルベニア)、茨城(デラウエア)、軽井沢(ニューハンプシャー)、早稲田・高田馬場(ボストン)。なるほどねえとなる。

 ビジネスの場で、名刺を交換する場合は、「名刺です」(Here’s my name card.)とただ名刺を渡すだけでなく、「さらにもう一枚、本のしおりにでも」(And one more. Just as a bookmark.)。「こんな言葉を添えて名刺を渡すとウイットを感じてくれて、覚えてもらえます」という。

 日本人のままでアメリカ人に溶けこむ方法。ある意味「日本人とは」という本でもある。(三浦)