アジア憎悪激化

犯罪急増、取り締まり強化

「モンキー!」路上で罵倒

チャイナタウンのネイルサロンで従業員を罵倒して逮捕されたウィリアムズ容疑者(地元テレビ画面から)

 ニューヨーク市警によれば、3月だけでアジア系市民に対し少なくとも33件のヘイトクライム(憎悪犯罪)が起きた。市警は取り締まり強化を図っているが、4月に入っても止む気配がない状態だ。

 ブルックリンのイースト・フラットブッシュにあるコインランドリーで5日午後5時頃、女が店のカウンターに無断で入ったためアジア系の女性従業員(47)がとがめたところ、女は洗剤のボトルで従業員の頭を地面に倒れるまで何度も殴り、逃走した。女性従業員は軽傷を負った。マンハッタンでも7日午後7時36分頃、グランド通りで屋外で食事をしていた2人のアジア人に女が近づき、アジア人への差別的言動をしたうえで一人の女性の顔を引っ叩いた。警察はそれぞれ防犯カメラに映った動画を公開し、犯人の行方を追っている。

 ニューヨーク市警察は7日、アジア人に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)および暴行事件関連で容疑者2人を逮捕・起訴したと発表した。

 一人はグレゴリー・ジャック被告(33)で、4月3日午後6時頃、ミッドタウンにあるセブンイレブンで、アジア系従業員(26)が万引きしようとした男を止めようとしたところ、男はアジア人への差別的言動を吐きながら、従業員の顔を数回殴った。もう一人はジョセフ・ルッソ被告で、ブルックリンのシープスヘッドベイにある食料品店で5日午前11時頃、買い物客のアジア系男性(77)を地面に押し倒すなど暴行行為を働いた。ルッソ容疑者はこのほかにも3月22日にミッドウッドでアジア系女性(33)の髪を引っ張るなど行為をしたことが防犯カメラで確認されている。グレーブセンドでもアジア系女性(64)を突き飛ばした疑いがある。

 ニューヨーク市警はアジア系への犯罪行為を取り締まるため私服警官を増やしており、現場での逮捕に至ったケースも出ている。チャイナタウンでは7日、女がネイルサロンに入り、アジア系の従業員に「お前らがこの国にコロナを持ち込んだ」などと罵倒。その後、店を出て歩道にいた通行人らに「モンキー」「チャイニーズ、マザー・F***」など叫び続けた。居合わせた私服警官がその場で逮捕=写真=。女はシャロン・ウィリアムズ被告(50)でヘイトクライム(憎悪犯罪)となる悪質な嫌がらせ行為罪で起訴された。

 9日には、ペンステーション近くの7番街33丁目付近で午後4時30分頃、私服警官と知らず、「墓場にたどり着く前に中国に帰れ」「小便をかけ、顔をはたくぞ」などと脅した男が逮捕された。犯人のジュビアン・ロドリゲス容疑者(35)は麻薬や暴行など過去20件以上の逮捕歴があった。

ドアを閉めたドアマン解雇

 ミッドタウンのコンドミニアム(43丁目360番地)の前で起きた65歳のアジア人女性暴行事件に関して、6日、建物の中から暴行の様子を目撃していたドアマンとコンシェルジュを解雇したとビルのマネジメント会社が発表した。

 監視カメラの映像には、暴行の様子をただ見ている配達人の姿や、暴行男が去った後で道路にうずくまっている女性を前にドアを閉めたスタッフが映っていた。男性らは女性を助けようとしなかったとして、非難の声が多く寄せられていたが、ドアマンとコンシェルジュの2人は、男がナイフを出すのを見たため止めに入らなかったと説明していたという。マネジメント会社は解雇理由を「必要な緊急・安全手順が遵守されなかったため」とし、その場に居合わせた場合の緊急対応手順など、再教育を実施すると述べた。

腕つかまれ危うく線路に
日本人地下鉄駅で襲われる

 ニューヨーク日本総領事館は14日、ニューヨーク市の地下鉄の治安に関する注意喚起を発信した。それによると在留邦人から、4月7日夜、友人とブルックリン地区の地下鉄G線メトロポリタン街駅のプラットフォームで地下鉄を待っていた際、見知らぬ男に腕を掴まれて線路に引きずり下ろされそうになったとの報告があった。他の乗客が止めに入ったことから、加害者はいったん現場を去ったものの、5分後に再び現れて被害者に暴行を加えようとし、改めて他の乗客が被害者を取り囲んで守ったため、加害者はようやく立ち去った。被害者はその後、ニューヨーク市警察(NYPD)に被害届けを出し、総領事館にも連絡した。

女性にタクシー代提供します。

 ニューヨークで広がるアジア人に対するヘイトクライムの増加に伴い、アジア人の高齢者や女性に対して配車サービスの利用料金を一部負担するプロジェクトがスタートした。

 発起人のマディ・パクさんはインスタグラム(@cafemaddycab)を開設し、アジア人の高齢者や女性、LGBTQの人々に対し、ウーバーとリフトの利用料金を最大40ドルまで提供すると発表した。パクさんは自己資金と友人らの援助を受け、2000ドルでプロジェクトをスタート。寄付を呼びかけたところ、わずか2日間で10万ドルが集まったという。サービスはマンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクス。使い方は前出のインスタグラムを参照する。寄付はVenmo (@cafemaddyCAB)でも受け付けている。

警察官が安全対策講演
JAA春のサクラフェアで29日

 ニューヨーク日系人会(JAA)が開催する第13回JAA春のサクラフェアーで、NY日本総領事館とNY日系ライオンズクラブの共催企画「邦人安全対策虎の巻」が29日(木)正午から1時間ZOOMによるオンラインで開催される。NY市警察(NYPD)の現役担当官が犯罪からの身の守り方などを含め、深刻な問題となっているアジア・コミュニティーの安全対策として講演する。 質問は事前に受け付ける。申し込みはNY日系人会のEメール info@jaany.org