キーン先生さようなら

日本文学愛した生涯
コロンビア大で基金設立

 日本文学研究者のドナルド・キーン氏が2月24日、東京都内の病院で心不全のため亡くなった。96歳だった。遺族は、養子で三味線奏者/文楽太夫のキーン誠己さん。
 キーン氏は1922年ブルックリン生まれ。16歳でコロンビア大学に入学、18歳の時に本屋で偶然に「源氏物語」の英訳に接して当時の戦争の色濃い社会と懸け離れた雅な世界に魅了された。第2次世界対戦中はハワイで通訳として日本兵の日記などを訳した。戦争後はコロンビア大学に戻り、生涯にわたり日本文学の研究を続け、数多くの翻訳や研究書を出版し、米国をはじめ英語圏での日本文学理解に貢献した。文化勲章を受賞。京都大学へ留学、三島由紀夫や谷崎潤一郎など文豪らと交友を深めた。日米を行き来していたが、2011年3月の東日本大震災に際し「日本人と共にいたい」と日本移住を決め、同年4月26日にはコロンビア大学で最終講議を行った。同講議では、「残された人生は日本で暮らしたい。愛する日本に感謝の気持ちをどういう形で表現できるかを考え、日本人とともに災難を知ることが必要だと固く決意した」とその心境を話した。翌年には日本国籍を取得、「鬼怒鳴門」とも名乗っていた。  
 コロンビア大学のドナルド・キーン日本文化センターは、同氏の死を悼み、今秋に同大東アジア言語文化学科と共同で追悼式典を主催すると発表している。また、キーン教授記念奨学金制度を設立した。同奨学金制度への寄付を受け付けている。詳細はウェブサイトwww.keencenter.org